日本の古典 古代編 第十五回 王朝の光と闇 大鏡と今昔物語

十五、王朝の光と闇  大鏡と今昔物語
 一、院政期の意味
摂関体制の弱体とともに院政が始まる。
王朝の最盛期への憧憬と伝統的なものへの回顧の意識が生じる。
二、大鏡 紀伝体の歴史
 藤原道長の栄華を描いた歴史物語
参考 「栄花物語」 道長の権勢につくまでの過程と栄花の実態を描く
もののけや怨霊の跳躍などがリアル、登場人物の心理描写が多い。
大鏡  藤原北家の権力争奪の歴史。850年〜1025年、176年間の歴史。
紀伝体 序、本紀 (天皇の一代記),列伝(折衝、大臣等)、
人物に焦点を当てた記述。中国の「史記」に倣う。
三人の語り手による戯曲形式だが、大部分は一人語り。
 190歳 大宅世継、180歳 夏山繁木、若侍。
例、敦明親王の退位をめぐる裏話。
 大鏡の歴史意識
   摂関体制の確立の道筋、道長と伊周との競射の場面。
道長が摂関体制の頂点を極める必然性を示す。
三、今昔物語の世界
  千余りの説話を収録した三十一巻にも及ぶ説話集。インド、中国、日本を舞台
とした日本最大の説話集。
特徴
・組織性 仏教の三国にわたる仏法史の整然たる展開。
 世俗部では藤原氏、武士側の歴史を皇室中心に統括しようとする意図がある。
 武士階級の歴史は、第二十五巻 兵(つわもの)譚 に収録
  武士の存在が無視できない現状を著わしている。
・非王朝の世界の取り込み
  二十七巻 霊鬼・怪奇譚、二十九巻 悪行譚(強盗、殺人、窃盗、強姦)
反秩序的世界を取り込みリアリティのある説話となって文学上も評価。
 芥川龍之介は 「野生の美」と評価。
 「偸盗」若く美しい女盗賊が笞で男を打つマゾひずむの世界。
王朝人が武をの異端者とみる意識の例 
 「源頼信朝臣の男頼義、馬盗人を射殺す語」
「左衞門尉平致経、明尊僧正を送る語」 など。
以上