社会の中の芸術 第14回 料理芸術における普遍性と特定性

第14回 料理芸術における普遍性と特定性
 
1.日本料理における器の重要性

  西洋銀座吉兆店 湯本さんへのインタビューより


 Q.日本料理には料理毎に器が違うがなぜか?

  A.基本はお茶の懐石料理がある。道具の取り合わせの美意識が根底にある

   器は料理の衣装であり、器の取り合わせの妙を楽しむ事がある。
 Q.では料理と器の組み合わせはどうか

  A.料理を活かす器とそうでないものがある。料理の生える器は決まっている


 例えば


 「刺身」 八橋の盛り付け、あわびの殻に盛り付け、景徳鎮の青磁

      クリスタルガラス の四種がある。皆趣きが違う。


 「八寸」 オードブルに相当するが一;九つパレット二;ハスの葉っぱ、


       三クリスタルガラス と三種


 「鮎の焼き物」 �備前焼きの皿のみ  �備前焼きの皿と青竹 �熊笹


     その時々の状況に応じておいしく感じられるよう料理するのが腕。


 Q.器を選別する眼力はどう育成していくのか


  A.良いものをたくさん見ること、絵画も色の合わせかたとか参考になる。


2.フランス料理について


  本の紹介 「ガストロノミ」美食のための知識と知恵(文庫クセジュア) 

  この本は、伝統的なフランス料理の考え方を紹介している。
  芸術関係の著名な出版社が料理の本を出版することが料理は芸術であり文化的な
ものであることを物語っている。


 シャトー・レストランJoelRobuchon 山地さんへのインタビュー


  Q フランス料理にとって器の位置づけはどうか


本では食器をさほど重要なものではない、という考え方が根底にある、

   しかし、最近は変化してきた。


   日本料理   器:料理=5:5


フランス料理 基本は白い皿 アラカルト中心から、少量多品目に変化している


       ドレスコードもうるさくなく、サービス重視、日本の影響もある。


      時代の変化を取り入れて料理も変化してきている。


 3.普遍性と特定性


   日本料理 特定性が強い。 部屋、人、季節、材料、会食の趣旨などの要素を

考慮した特定性の強い料理を出す。


        一見お断りは、どんな人かわからないと最高のもてなしを できないので断るという理屈。常連はますますその個人に とって良いものが出されるという循環がある。


   フランス料理 
      料理によって器は変わるが人や季節では変わらない。普遍性があること
が特徴である。 正しい調理法が伝われば世界どこでも再現可能である。


 4.サービス性について


   日本料理  個室が重視される。 個室では互いにくつろぐ。


   フランス料理  他人がそばにいる緊張感、マナーを重視。


           空調、照明、BGMなどく空間の演出にも配慮する。

4.飲み物について
   日本酒  時、場所、場、料理などで異なる。

        特定性に応じた多様性が存在している。


   ワイン  ワインの種類でグラスが違う。


   シャンパングラス、白ワイングラス、シャルドネグラス、ブルゴーニュの赤用、


   ボルドーの赤用と決まっていて変化しない普遍性をもっている。

                                以上

テキストの要点

 1.日本料理の特定性
  吉兆 ---同一人に同じ料理はださない。 記録してある。
       季節、材料、器、会の目的などで料理も変わる。
  徹底した特定性が高級日本料理の特質
 2.フランス料理
  どの料理がどの器に相応しいかで器は変わるが、季節や場所、人によって変わる
  ことはない。 人と時の普遍性を持っている。
  料理のレシピは言葉と数字で普遍的に記述されているので、世界のどこで作っても
  ほぼ同じものがてきるという普遍性を持っている。

 3.ワイングラスの違い
  
   生産地   品種           ワインの特徴   ワイングラス
   ボルドー カベルネ・ソーヴィニヨン 深い、渋み     口が鼻が入るほど
                               の広さ
   ブルゴーニュ ピノ・ノサール   繊細、芳醇な香り   広い底