日本文学概論 第十四回 永井荷風と谷崎潤一郎 文体の創造

十四、永井荷風谷崎潤一郎 文体の創造
一、永井荷風
 明治末期 自然主義文学 島崎藤村、詩人 「若菜集」 --破戒
             田山花袋 桂園派 詩人 ---蒲団
人間や社会の姿をありのまま描く。
徳田秋声正宗白鳥近松秋江 → 私小説 古典からの乖離
大正初期 反自然主義 白樺派 荷風と谷崎、耽美派
荷風と谷崎の交流 「三田文学」谷崎は荷風を先輩・恩人として敬愛した。
 二、荷風と西欧
 明治三十六年から5年間フランスと米国に滞在した。
 明治四十一年 荷風はパリで上田敏と邂逅する。
 同年 帰国後 慶応大学教授 雑誌「三田文学」を創刊。鴎外の作品も掲載。
 大正二年 翻訳詩集「珊瑚集」上梓 フランス詩人十三人。ボードレール
    サマンなど三十八章を収める。
     古典の語彙を露骨には使用しないで、しかし古典文法に立脚した文語体
で訳した。
荷風は古典的にして古典的でない。 江戸への回帰。
三、麻布雑記の世界
大正十三年発刊 小説・随筆集。季節感に満ちたタイトル。
 「雨蕭蕭」、「花火」、「雪解」、「春雨の夜」など
  「隠居のこごと」「梅雨晴」→鴎外の史伝を書いている。
 「下谷叢話」 鴎外に倣って書いた伝記。
四、谷崎潤一郎の世界
 「文章読本」→「源氏物語」の現代語訳に取り組むにあたっての文章への
思索を書いた。文語体も口語体も区別しない。
古典の文語文の精神に立ち帰って、口語文を書く。それが口語文を
           窯変させることになる。
源氏物語をどう活かしたか
 昭和十四年「潤一郎訳源氏物語」」
 昭和二十六年〜二十九年 「「潤一郎新訳源氏物語
    昭和三十九年〜四十年 「潤一郎新々訳源氏物語
代表作「細雪」が源氏物語を現代世界に転生させた点。
    関屋の巻 あざやかに衣装をまとい、注目を浴びる箇所。
 文体の放つ香りを現代小説で再現している。
小説「夢の浮橋」」
京都の屋敷「せんかん亭」をモデルとして、光源氏藤壺
 愛のタブーの香りを現代に復活させた。
義理の母と息子の愛。
人間の愛の真実を「秘密」という沈黙によって雄弁に語らせる物語の方法で現代に復活した。