和歌の心と情景-5

5.伊勢物語源氏物語の和歌
源氏物語和歌集 795首
  京都散策VTR
  源氏物語ゆかりの地 紫式部の墓、小野たかむらの近く
  "年暮れて我が世ふけゆく 風の音に 心のうちのすさまじきかな"
  作者の心の内が表されている和歌
 旅の歌
  伊勢物語 旅と恋がテーマ 在原業平東下り
  "時知らぬ 山は富士の嶺 いつとてか 鹿子斑に 雪の降るらむ"
富士山と在原をスケールの大きさで同一視している。 
 源氏物語 須磨への流離
   江戸時代の作った遺跡
    須磨の関、蔦の細道、明石入道の碑
  "秋の夜の 月毛の駒よ わが恋ふる  雲居を翔けれ 時の間も見む"
  大空を飛んででも紫の上に逢いたい感情が出ている

 伊勢物語第69段
  (女) "君や来し我や行きけむ思ほえず夢か現か寝てか覚めてか"
 (男) ”掻き暗す心の闇に惑ひにき 夢現とは今宵定めよ"

    斉宮と業平との一夜はらみと平安時代はでは解釈されていた。

源氏物語の恋の歌
 夕顔の巻
  京都市内 夕顔の碑 夕顔の花 庶民の家に咲く夕顔の花
 夕顔の歌
   夕顔 "心当てにそれかとぞ見る白露の光添へたる夕顔の花"

   源氏 "寄り手てこそそれかと見め 黄昏にほのぼの見つる花の夕顔"

 夕顔の花の上にも夕方になると露が宿りその白露に夕陽が当たると美しく輝くときがあります。
  この夕顔のようにあなたさまがおいでになったのでこのわたしもうきうきとなってしまいま
  した。あなたさまは一体どなたなのでしょうか。

 宇治十帖 
   宇治 憂じ つらい の意味
  宇治川 人間を翻弄し過酷な運命に導く象徴
  宇治橋 長い橋なので永遠の愛のシンボル とも言われるが洪水で流されることも
      多く「はかない愛」のシンボルてもある。

 どんなに長く恋人と暮らそうと思ってそれができない哀しさがテーマとなっている。
 これが舞台を宇治とした理由。
 「夢の浮橋」の石碑 「宇治上神社
 薫は、好きな女性が次々と去っていく。
 薫の愛人浮舟と匂宮との三角関係
 雪の夜に舟に乗った匂宮と浮舟が宇治川を渡るシーン 
  男 "年経とも変はらんものか橘の小島の崎に契る心は"
 女 "橘の小島の色は変はらじをこの浮舟ぞ行方知られぬ"
   現代でもこの夜に居場所を得られない人は多くいるのでリアリティがある。
 橘島 宇治川の戦場跡石碑(平家物語)
運命には残酷さと温かさの両方があるという式部の心。
  浮舟の歌は自分の魂に向けて発した歌。

 源氏物語和歌集の最初と最後の歌
  最初
  桐壷の更衣 
  "限りとて別るる道の悲しきに 生かまほしきは命なりけり"
    子供や桐壷帝と別れたくない、もっと生きたい叫んでいる歌。
 最後
  薫
    "法の師と尋ぬる道を標にて 思わぬ山に踏み惑うかな"

      進むべき道を失って惑う薫、浮舟の生存を知ってこれからどう生きたらよいのかと
      迷う自分の嘆きを歌った。
      和歌に託すしかない自分の心と時間。
   源氏物語はどこまでも「生きることの意味」を問い続けた終わりのない
   「心の旅路」だった。