社会と芸術 第12回 食材と静物画

12章 食材と静物


1. 西洋美術における静物

ほんものそっくりに描く技巧が賞賛された。

この発展が「トロンブ・ルイヨ(だまし絵)」となった。

例 「手紙掛け」エドワード・コリア


古代 ポンペイのモザイク画

古代の静物画 「クセニア」と呼ぶ

元々は本人が客人に贈る食料や食材を代わりに絵として贈ったことから

発祥した。

新鮮な食材をそっくり再現し眺めていたいとという欲求から流行した。

ルネッサンス以降の静物

15世紀 フランドルで生まれた静物

描かれた物がキリスト教的な意味を持つ

洗面器、水差し、タオル 聖母の純血、ワイン、パン キリストの象徴

リンゴ 原罪、ザクロ 受難


アトリュビュート

聖母 百合、ペテロ鍵 鍵、パウロ 剣、ジュピター 雷、

ヴィーナス バラやりんご


目にみえるものに人や抽象的な概念を重ねるというのは西洋の独特の思考方法。

東洋は漢字という表意文字があったためなかった。


2.近世の静物

静物画は、事物を画家が思うがままに配置することできるため「構成を追求するの

が容易なため発展した。


(1)オランダの食卓画

カラヴァジョ 「果物籠」から静物画が絵画の主題になることがわかった。

当時のオランダで絵画

フローリス・ファン・デイク チーズのある静物 食卓画

リンゴ 酸味。チーズ 辛み、葡萄 甘み、木の味 苦み。

スルバラン 「静物(ボデゴン)」

ヴィレム・クラ・へーグ 「朝食のてーブル」

この世のむなしさを戒める「ヴァニタス」の意味がこめられている。

死を連想させるもの「メメント・モリ」とも言われた。 モチーフとしては、

頭蓋骨、時計、消えたランプ、楽器、書物など。

宝石、財布、硬貨 消滅する現世の価値

花や果実 短命、生のはかなさ を象徴する。

スネイデルス「静物」、

ステーンウェイク 「静物・虚栄の寓意」

パルステ・レアール「世の栄光の終わり」

「パンとワイングラスのある静物

ヘイエレン「静物

ヴィレム・カルフ「オウム貝のある静物

ビーテル・クラースゾーン「にんしのある静物」貿易による影響。


3.近代の静物

造形実験としての静物

静物画を造形的追求の場とする試み。

セザンヌ「リンゴとオレンジ」

マチス「赤い食卓」

色彩と構成による造形的な実験を追求した。

パプロ・ピカソ キュビズムという実験

三次元を2次元で表す

「食堂」、「ブラック(円卓)」

物がそれ自体で芸術になるという20世紀の静物画を予告するもの

「パピエ・コレ」

3.大衆消費社会の静物

アンディ・ウォーホル 「キャンベル・スープ缶」

大衆消費社会での缶詰やマリリンモンローの肖像など社会に広く流通している

ものが人間の美意識に合致し人気を博す。


絵画は目の前にある事物や事象を写して留めるという欲求から生じた。

よって食物と絵画にはともに、生や現世を肯定しつつ、自然を克服して人の手に

入れられるようにしたものという共通点がある。それゆえ食物は絵画のモチーフと

なりうる。



以上