社会と芸術 第13回 料理美学序説
第13章 料理美学序説
放送教材要約-
-- インタビュー --- 日本料理 吉兆西洋銀座店長 湯本俊治
1.日本料理の特質について
素材の持つ力をこえることはできないが、その引き出し方に工夫がある。
◎素材の引き出し方
塩梅 塩の使い方 刺身、焼き魚の例でいうと鮎は塩加減で違う物になる。
最適の点は一点しかない。
西洋のバター、ソース → 鰹だし、昆布だし、醤油、塩ということになる。
◎もうひとつが食べる人の健康状態を考慮するということである。
例 冬 --- 醤油 夏 ------ 塩主体
日本の食材は水分が多い。
野菜は炊くことが多い。
2.食材の鮮度で違う料理とすることがある。
魚の新鮮なものは刺身、しまっているものは焼き物や昆布締めとする。
果物は熟度で使い分ける。
3.お客に合わせてあつらいをする。
夏でも空調が効いた部屋では熱々のものを出すことがある。
4.五感をトータルに味わう。
器の取り合わせ、部屋の調度の整えかたもその中に入る。
5.最近は新しいうまみの追求もしている。
例 はまぐりのスープ+α として乳製品はかつおだしは合わないがそこに味噌を入れると調和するという不思議さ。
野菜を炊くときに西洋だしを使うなど。
海外旅行や滞在の発達で日本料理にも西洋料理のプラスαが入ってきている。
二、日本料理の技法の伝承のついて何か違うことがあるか。
レシピは昔はなかったが、最近は多店舗展開しているので味の均一性ほ保つ必要からある程度のマニュアルを作るようになっている。
日本料理は、切る、焼く、炊く、盛り付けと分野が分かれているので、仮に各パートを2年やったとしても下働きをいれると10年がひとつの修行期間となりこれでも言われたことがわかるという程度であることから修行期間が長くなる。
−−−− 西洋料理のについて −−−−−
フランスレストラン店長 ジョエル・ロビション さんにインタビュー
Q.料理は芸術ですか?
A.なまものに火を通すことで文明が始まった。また昔から栄えた国家には美食文化が必ずある。認識論的にみると、身体を維持する栄養を維持するという日常かくべかざる面もあが、演奏会や展覧会と同じ晴れの場の営みもある。
Q.料理の視覚的側面について
A.料理は見た目も重要。見栄えの悪い料理はだめ。
Q.フランス料理は、器にあまり凝らないようだが・・・・・・。
A.食器の種類が少ないが。現代では進歩してきている。
見た目よりも味を重視しているのがフランス料理
A."キャビア"は元はスノップな食べ物。ロシアではサワークリームを付けて食べていた。
キャビアの持つヨード味を生かし、カリフラワーの渋みとクリームの酸味が必要でそれを合わせるものとしてジュレがある。
絵画とおなじく調和を追求する。
料理ほど五感に訴える芸術はないでしょう。
このジュレは、仔牛の臑からとったゼラチンを使っている。
フランス料理は魚こそ新鮮な素材にはめぐまれていないが他は豊富にある。
これまではソースを重点としてきたが最近は違う。変わってきている。食材そのものの味を活かした料理を追求してきている。
以上
13章 テキストの要点
料理は芸術なのか?
筆者の結論は「芸術」である。
なぜか、美術や音楽が芸術である哲学に照らし合わせてみると、「自然の本質の表現」であるという点を、料理は高度に複雑で洗練された技術を駆使して「自然の生命的な本質を直接的に表現している」ことで芸術と言える。
これまでそうでなかった理由。
カントの美学哲学に欠陥があったせい。
カントの美学の欠陥とは「料理に由来する快は自然の美とは根本的に異なると考えてことである。すなわち、料理は個人の趣味に大きく左右されるので美としての普遍性を持っていないと考えたことが原因である。
しかしフランスのシャルル・ラロは、芸術体系の中で感覚的快楽性のなかに美食芸術として滋養の富んだ栄養物として飲み物や料理お菓子を含めて摂取することも該当するとと立論していた。
アリストテレスも言っていたように世界の本質のミーメンス的表現を芸術とすれば、料理もその存在が植物と動物の存在の連鎖としてなりたっているので、自然の生命の本質な表現という芸術なのである。
<存在の連鎖> ----第1回での定義
絵画 ----文化的本質の間接的な表現
料理 ----自然の生命的な本質の直接的表現
ただし料理のすべてが芸術なのではなく、「その最も高度なものにおいては、自然の生命本質が最も強く現れた理想的にして典型的な最も存在強度の強いものの本質を、直接的に、しかも最も手の込んだ高度で複雑で洗練された技術を駆使して、最高度に表現する料理が芸術である。」と言える。
芸術である料理の例
フランス料理 ---- ジョエル・ロビションの料理
従来のフランス料理は食材が豊富にあるのでその食材を複雑に調理するとともにソースに偏り過ぎていて食材そのものの味を引き出すことができなくなっていたものもある。
しかし、最近のフランス料理は食材のもっている味を引き出そうとして方向に変わってきている。
複雑性をめざす。足し算の料理
日本料理
純粋性をめざす、引き算の料理。食材そのものの味風味を引き出すために調理やソースを最小限にしようとする。しかし最近は西洋調味料も取り入れるなどして西洋料理に慣れた日本人味覚にも合う料理も出てきている。
結論
料理は五感にトータルに訴えかける芸術であり、自然・生命に対して敬意を払い、その自然の生命体である食材のもっている力=可能性を最大限に引き出して、それによって自然・世界の本質ほ最大限に引き出そうとする芸術である。