和歌の心と情景-1

1.万葉集の風景と情景 
 3人の歌人
 「額田王」ぬかだのおおきみ  女性
   "熱田津に舟のりせむと月待てば 潮もかないひぬ 今は漕ぎいでむ

  スケールの大きい歌、松山道後温泉付近の港
    661年 百済の救援ために出征 斉明天皇の指揮  
   額田王系図
     天武天皇に嫁ぎ、十市皇女を生んだ。
     "君待つと吾が恋ひ居れば 我が宿の簾動かし秋風の吹く”
     天智天皇を慕う女性を演じてみせた。先代中国の漢詩の表現を取り入れた。
     虚構の創作

 柿本人麻呂 かきのもとのひとまろ
  "東の野に炎の立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ”
   軽皇子の時代がやってくることを祝福している歌。
  "もののふの八十宇治川網代木に いさよふ波のゆくへしらずも”
   大津の都があった時代を思い、悠久の時の推移を発見した。
  "楽浪(ささなみ)の志賀の大わた淀むとも 昔の人にまたも逢はめやも"
という歌もあり、この歌と関連している。
  無常感を読んだのではなく、淀む水を見て 時の移り変わりを発見し。
    人間の営みをいとおしく見つめ返していると解釈したほうがよい。
  "あしひきの山川の瀬の鳴るなへに 弓月が岳に雲たち渡る。" 7-1088
奈良県櫻井市三輪付近の痛足川と巻向山のこと指す。
      大自然の動き、神の力をを感じとっていた。
  柿本人麻呂の歌の特徴
   ・固有の叙情が力強く表現されている。
  ・自然の力、神の力を感じ取り、わが思いを力強く押し出している。

 大伴家持 おおとものやかもち 万葉集の撰者かもしれない
   "春の苑紅にほふ桃の花 下照る道に出で立つ娘子(おとめ)"
  漢詩文の影響が濃い。幻想の風景を立ち上げようとした理由。
    高岡に赴任していた望郷と誇りが内包されている。

  "うらうらに照れる春日にひばり上がり 心悲しもひとりし思へば "
  風景と心が決して融合しないけれど歌を作ると人に伝えることができるので心が
    晴れる。
 万葉集の歌の特徴
  素朴の心が表現されていると一般的には言われているが正しくはない。
  言葉の論理と、集団の空気への鋭敏な感受性に満ちていると受け取ることで初めて、
  万葉人の心が見えてくる。